ある日突然家の前にマンションが・・・その後

あのマンションも、そろそろ完成の頃だろう。

近隣紛争とまではいかないまでも、何度も地元説明会を行った、例のマンションである。

先日地下鉄で、近隣住民の一人と思われる方を見かけた(建設地の最寄り駅で乗車してきたので、多分そうだと思う)。声をかけるべきか、かけないべきか迷ったが、結局声はかけなかった。今思えば、声をかけて話をするべきだったのではないかと少し後悔している。近隣の方たちが、どのように思いながら生活を送っているのか、僕の中で、多少トゲとなって残っている部分があるからである。

あのマンション7階建てであるが、確認申請時は、7階はほとんど小屋裏物置の用途で申請した。建築基準法では、天井高をmax1.4m以下とすれば小屋裏物置として床面積にカウントされない。確認申請時・完了検査時にダミーの天井をつけておいて、検査後に、ちゃっかり人の生活できる空間をつくってしまおうという魂胆である。結果、容積率オーバーの違法建築の出来上がりである。僕は、こんなプランで行政が小屋裏物置と見てくれないだろうと忠告しておいたのだが、結局、確認申請は小屋裏物置で提出した。だが、さすがに行政もそれほどバカではない。相当部分において小屋裏物置は認められず、プランを見直すことになった経緯がある。

設計者として、本来、こんな建築基準法をないがしろにする行為は許されないことである。僕も、その片棒を担ぐことになるのであるから(実際に設計に関わったということでは名前はどこにも出ないのだが・・・)この仕事に協力するのか?断るのか?迷うところなのだが、僕にも生活がある。このときの状況は、断れば間借りしている事務所から出て行かなければならない身である。おまけに、僕が断っても誰かが後のことを進めるのだろう。回りを見渡せば(協力業者も含めて)僕以外は、何の反論もせずに計画を進めていきそうな感じである。僕は、この時悩んだ末に“よりマシ理論”を選んだのだった。

その後僕は、ほかの事情もあり、ここの事務所を間借りすることはやめ、完全フリーで再出発することを選んだのであるが・・・

その後、夏ぐらいに計画を変更する話しがあると連絡が入った。結局あの建物は、取りまとめも含めてほとんど僕が設計したものなので、道義上、変更の図面まではお手伝いさせていただいた。この時も、疑問が残る計画だったので、「近隣住民の目もあるので、あまりおかしなことはしないほうがいいんじゃないですか?」と話しておいた。

その後、実際の計画変更確認申請の時には声がかからなかったので、あの図面で申請したのかどうかは僕にはわからない。
デザイン的には、多少凝ったマンションである。(A所長はデザイナーズマンションと豪語していたが・・・)
一度、完成の頃を見計らって、現地を確認しに行きたいと思っている。そのときに、近隣住民と話をするべきなのか、しないべきなのか・・・。不満がありながらも納得して生活しているならば、寝た子をおこすようなことはしないほうが、近隣の方たちにも幸せなことなのだろうか。
ふと思ってしまうのである。

多少あいまいな表現ながらも書いてきたこの話であるが、内容的には内部告発に近いものであるだろう。そのため、関係者に不利益が生じないように配慮はしたつもりである。
しかし、実際にオーナーのためなら建築基準法を違反することなどなんとも思わない(心の中では良心の呵責があるのかもしれないが)設計者が存在することは事実である。また、僕の個人的な意見であるが、今回の事例は、まだ良心的なほうであり、もっとひどい設計事務所も多数あるはずである。
みんな自分の生活があることはわかるし、飯が食えなければどうしようもない。でも、自分勝手はやめようよ。街は、公共の財産であり、自分の行為が、みんなの街に影響を与えていることをもっと意識しようよ。

この“その後”を書くのかどうか、迷った末に、今日書くことにしました。
世の中には、良心的な設計事務所や施工業者も多数いますが(こちらのほうが多い事を願っている)、自分勝手な業者も多数いることも事実です。
また、完了検査が済んで検査済証がおりてから、違法建築に改造するオーナーも多数います。(設計事務所が介在しない、このパターンが一番多いと思われます。)

設計事務所は、建物を建てるときだけに利用するものではありません。
建築に関して、疑問なことや、トラブルがあったときにも、相談に乗ってくれます。
そんな事があったときには、是非相談してください。
良心的な設計事務所なら、あなたの力になってくれるはずです。

このログを読んでくれた方へ、感想をコメントしていただけると幸いです。
僕の今後の道標として・・・。

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