接着剤に頼る建築に感じること

住宅の耐用年数をどれくらいで考えるのかは、難しいところだと思うのですが・・・。
せめて、最低50年くらいは建っていて欲しいものだと感じます。
実際のところ、条件によっては70年、100年という年月も不可能なことではないはずなのですから。

で、そういう視点で設計をしているのですが、疑問に思うのが、構造部材を接着剤に頼って本当に大丈夫なのかということ。
「金指原の家」でも、土塗り壁で設計しているため、建築基準法の壁量を満たすために、面材耐力壁を使いたくなって仕方がありません。

使ってしまえば、楽に必要壁量が取れてしまうのも事実です。
しかし、集成材のようなラミナが厚いものならともかく、合板のような一枚あたりの厚さが薄いものを接着剤で貼り合わせたものが、どれくらいの耐久性があるのか、ちょっと不安になったりして・・・。

そこで、ちょっとしらべてみたのです。
財団法人 日本合板検査会のウェブサイトにこのように書かれていました。
合板の耐久性は、使用接着剤により変わってきます。フェノール樹脂を用いた合板は、野外環境に長期間暴露されても高い耐久性を有しています(3プライ合板を15年屋外暴露した場合で残存率は50%程度)。表面処理を施さない合板は、単板の劣化が激しく、接着層よりも単板の寿命に左右されます。木造住宅の外壁下地に使用した例では、実際の使用環境下で約20年経過後の強度性能は、規格基準値を満たしています(木造住宅の構造材に使用される場合、使用環境は暴露環境よりゆるやかなため)。
ユリア樹脂を用いた合板は、屋内では長期の使用が可能ですが、屋外では接着剤の劣化により3年程度ではく離しています。
合板の耐久年数は、長期間経過後のデータも少なく、難しいことですが、屋外環境にさらされる恐れのある場合は、JAS特類合板に表面処理を行って使用することが必要です(メラミン・ユリア樹脂接着剤使用の合板では、屋外暴露1年が20℃90%RH環境下のほぼ10年にあたるという換算理論が提案されているようです)。

個人的な見解では、耐用年数を20年とか25年で考えるのならあまり問題ないようですが、建物のライフサイクルをもっと長いスパンで見たときには、不安はぬぐえないような気がします。

やはり、(木造においては)構造部材は無垢材を使用したいところです。


ところで、ネットでいろいろ調べているときに、合板とか面材耐力壁について、賛否両論、いろいろな意見を目にしました。
ある住宅メーカーのウェブサイトでは、フェノール樹脂系の接着剤の耐用年数が100年以上だから、住宅の耐用年数も100年以上だとか・・・。
判断は、読者の皆さんにお任せしますが、上記の財団法人 日本合板検査協会の説明と照らし合わせると、矛盾している部分がある感じがします。
ただ、はっきり言えることは、接着剤に依存している建築は、新築した当初の強度が最高で、あとは時間とともに強度が衰えていくのみということです。
構造計算による数字だけが、建物の強さだと勘違いしないことが肝心なのではないでしょうか?

「接着剤に頼る建築に感じること」への2件のフィードバック

  1. >ただ、はっきり言えることは、接着剤に依存している建築は、新築した当初の強度が最高で、あとは時間とともに強度が衰えていくのみということです。
    それは真実ですね!絶対に!
    外壁に構造用合板(ベニヤ系)を使っている所ってまだまだ結構ありますね。
    数年前、お寺の庫裏らしき建物に構造用合板が使われていましたが、何年持たせるつもりなのか、ちょっと考えてしまいました。
    2×4工法も建てた時が最強で、後は劣化の一方ですね…。
    上棟時に雨に濡れて、大丈夫な訳が無いと思うのですが、何故建てている人がいるんでしょうかね…。
    甚だ疑問な工法です。

  2. こんにちは。
    接着材の耐用年数を疑いだすと、とたんに家の強度が不安になってくるところが、今の木造建築の怖いところだと思います。
    とりあえずは、国交省の言う、耐用年数70年は目指したいと思っているので、「接着剤はどうなのだろう?」と思ってしまうのです。
    なんたって、現段階では、接着剤建築で70年も経っている建物って無いですものね・・・。

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