社会のユニバーサル度を考えてみる

昨日は、名古屋市美術館へ行きました。(って。昨日のエントリーにも書きましたけど・・・。)

実は、僕と娘の2人で出掛けたのです。

やはり、こういう状態で外出をすると、社会の不便さを実感するわけでして。
それぐらいのことで不便さを実感する社会ですから、障害をお持ちの方にはさぞ冷たい社会なのだろうと思ったりもするのです。

今日は、僕の感じたことについて、すこし検証させてください。

まず、名古屋市美術館。
もう、家をでてから結構時間がたっていたので、まず”おむつ”を替えないことには、ゆっくり展示を見ることもできません。(なんせ、ちょっと歩くとすぐに寄り道するものですから・・・。だいぶ美術館に着くのが遅くなってしまいました。)
そこで、まず美術館の多目的トイレ(車椅子用のトイレのことです)へ。
入ってみたら、ベビーベッドがありません。
当然、男性用のトイレにはそんなものがあるはずもなく、女性用のトイレに入るわけにも行きません。辺りを見回しても、おむつ替えができそうなベンチもなかったので、仕方なく公園の芝生のところで替えました。

次に、美術館の中ではベビーカーを貸してもらおうと思ったのですけど、受付で尋ねたら、あっさりと「ベビーカーは用意してありません。」ショックです。これぐらいの規模の美術館だと、結構貸してくれるところが多いのに・・・。

最後に、展示室に入場するところで・・・。「今回の展示は”柵”などがしてありませんので、お子様は手をつないでいただくか、だっこして・・・。」疲れました。
子供がいるってだけで、この仕打ち。
俗に言う”ゲージュツ”ってのは、そんなに排他的なものなんかい。
コンサートとかも、杓子定規に”未就学児は入場お断り”だし。おっさん、おばさんだって、子供並みの常識しかないようなのたくさんいるじゃん。

次に、美術館をでたあと、お茶でもしようかと思ったのです。
やっぱり、禁煙の喫茶店ってのは、すぐには見つからないですね。
さすがに、中で煙が見えると、子供を連れてはいるのはねえ・・・。
ペットボトルのお茶を買って、神社の境内で飲みました。
そのあと本屋さんに寄っていると、娘が寝てしまいました。
このままじゃ疲れるし、どこかに寝かそうと思ったのですが、これもなかなか適当な場所が見つかりません。(当然か・・・。)
デザインセンターを、うろうろしていたら、情報コーナーみたいなところに長椅子があったので、そこに寝かせて、僕は芸術新潮を読んでました。

最後に松坂屋でオムツ換えをさせていただいたんですけど・・・。
ここの南館は、さすがに新しいだけあって設備が整ってます。
地下2階のトイレに行きました。多目的ブースのピクト(絵文字のことです)には、赤ちゃんの絵も描いてあったので、おむつ替えもできると思います。しかし、使用中でした。
次に、男子便所へ。やはり、ベビーシートまでは無し。
辺りを見回していると、乳児多目的室?というような名前の部屋が。どうやら、授乳やおむつ替えに自由に使える部屋だそうです。「さすが、デパートは違うなあ。」と思いつつ中へ。でも、授乳室っていっても扉一枚あるだけで、完全に無防備。開けた時には丸見えです。とっても、男性と同時に使用することなんて考えられていないようです。
しかし、うろうろしている余裕もないので、他の人が入ってこないことを祈りつつ、急いでおむつ替えを済ませました。
そのあと、今度は僕がトイレに行く番。実はここでも困るのです。ちょうど”大”がすべて使用中だったので、ブースの中のつくりは解らなかったのですが、男性用の便所って、ベビーチェアーとかほとんどないんですよね。子供をつれてはいると、気が気でないまま用を足す事態に陥ってしまうのです。今回もそうでした・・・。

このように、男が一人で幼児を連れて出かけると、ものすごく大変なんです。(それは女の人でも大変なのでしょうが・・・。)
いろいろな場所のつくり自体が、男は育児をしないという前提に作られてるところが非常に多いのです。このように、自分が実際に街に出てみると痛感します。

それは、僕ら設計者にも問題があることです。僕も、自分がこういう立場になってみるまで、本当の意味での大変さが解りませんでした。資料を見て、見せ掛けの机上の理論だけは身についても、実際にどう使うかは理解していない。そのために、それを利用する立場の人には使いにくいものになってしまう。世の、ユニバーサルデザインとは、実はそういう見せ掛けのものが多いのだと思います。
やはり、経験に勝るものはありません。僕ら設計者が、さまざまな立場の人のことを経験してこそ、真のユニバーサルデザインができるのではないでしょうか?と思ったりしているのです。

最後に、地下鉄に乗って思ったこと。
僕ら親子に、優しく声をかけてくれたり席を譲ってくれたりするのは、どうして年配の方ばかりなんだろう。それも、こちらが席を譲らなければいけないくらいの・・・。日本人の心ってこんなものなのかい。
そんななかで、僕ら親子のためにすばやく席を立ってくれたお兄さん。ありがとう。ちょっと救われた気分です。
そして、僕ら親子は、行き付けのカフェ・ルナールでお茶をして帰ったのでした。
ここ、禁煙なので。

それにしても、育児が大変ってのはなんとも思わないことなのですけど。
子供が生まれたら、それまでのライフスタイルを我慢しなければいけない社会って、どうなのよ。
それじゃあ、やっぱり少子化は止められないんじゃないの。

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