シンドラー社の考え方に疑問

「事故は主に管理や使い方に起因」 シンドラーが声明 -asahi.com-
2006年06月09日10時09分

東京都港区の公共住宅で起きたエレベーター事故で、日本法人がこのエレベーターを製造したシンドラーホールディング(本部・スイス)は8日、「エレベーター産業での事故は主に不適切な管理か利用者の危険な乗り方に起因していることが多い」とする声明を出した。
声明は「この事故を深く遺憾に思い、(亡くなった)高校生の家族にお悔やみを申し上げたい。原因究明のための捜査に全面協力する」としている。一方で、事故のあったエレベーターは「98年に設置。1年以上、シンドラー社は保守点検を担当せず、第三者である地元の会社2社が行っていた」と指摘。「当社には設計に原因のある死亡事故は過去にない」「事故があったエレベーターは国際的に多くの機関の認証を受け、世界中で使われている最先端の製品だ」としている。
事故があったエレベーターの製造元「シンドラーエレベータ」(東京都江東区)はシンドラーホールディングの日本法人。

まずはasahi.comのこのニュースから。

確かに、物の不具合というのは、製品そのものの設計ミスよりも、その後の管理が適正になされていなかったり、誤った使い方をしたために起きたりすることのほうが多いかもしれない。
しかし、建築物に関連するものには、必ず”施工”というものが存在する。
いくら設計時点で、製品化した時点ですばらしいものが出来ていても、施工する時にミスがおきやすい設計がされていたら、その製品が安全に取り付けられないこともあり、事故が起こる確率は高くなるだろう。
また、保守管理にしても、メーカー以外が保守管理するという事だって当然行われているわけだから、常識的な技術を持ち合わせた管理業者であったら、どこが管理しても安全に使用できる製品であるべきである。(メーカーが倒産するといった事だって考えられるし、事業を廃止するなんてメーカーもある。自分がつくった製品が、動いている間は安全に使用出来るようにしておくのは、製造者としてのモラルであり、義務なのではないだろうか。)
それが、不可能な製品なのだったら、それは設計時点での配慮が足りなかったということであり、直接製品にミスがなかったとしても、不具合があったといえるのではないだろうか?
建物を保守していくうえで、この”配慮が足りなかった”というのが、後々、様々な問題を起こすことが多い。
法律で決められている部分は、当然、誰でも守る。
しかし、実際に建物をデザインして、設計していく場合、法で決められたものよりも、設計者が自らの考えで決定していく部分のほうがはるかに多い。(そうでもない設計者も若干いるようだが・・・)

また、施工段階でも、将来的に問題が起きそうな箇所は、施工者と相談しながら、随時変更していくこともある。
実際には、工期やコストといった問題から、そういう精査がされずに、また、現場においてさらに悪いものへの変更がされたりといったことが数多くされているといった、問題も存在するのだが・・・。
ただ、物を設計する時には、そういった悪条件も考慮のうえに設計しないと、当初想定したスペックを発揮するのは困難なのであり、高い安全性が要求される製品ほど、1つのミス、2つのミスがあったとしても、人命は守ることが出来る設計をしておくべきなのではないだろうか?

僕ら意匠設計の分野を例にとると、階段の手摺なんてものがある。
手摺の高さや、形状が、簡単に人がすり抜けられるようなデザインだったとしよう。
ちょっと、自分でも危険かなと思ったが、通常子供が使う場所ではないので、デザインを優先して設計した。
ところが、何かの拍子で、階段で遊んでいた子供が転落して意識不明の重態になった。
なんてこともあり得る。
そうした時に、転落した子供と、設計者とどちらが責められるだろうか?

シンドラーエレベータには、そういったことを十分に考えた対応をして欲しいと思う。

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