天空率

建築に関する性能規定化のひとつとして「天空率」という概念が取り入れられて、数年経ちます。
まあ、いわゆる規制緩和の一環です。

集団規定(っていっても、一般の人にはわかりにくいですが、自分の建物が周囲に対して与える影響に対しての規制ってところでしょうか)に、性能規定がなじむのかどうか、個人的には疑問なのですが、規制が緩和されるので、たびたび使ってます。

のっけから、わかりにくい話題ですけど・・・。

「天空率」ってのは、簡単に言うと、「ある地点に立って、空を見上げた時に、どれだけ空を見ることができるか」ということでいいと思います。
つまり、新しい建物が建つと、必ず空は切り取られるわけです。これは宿命なので、しょうがないのですが、それによって空がどれだけ残されるのかを計算するわけなのです。

これが、どうして規制緩和に結びつくのかというと。
従来、建築基準法では、建物の高さは斜線制限(道路斜線・隣地斜線・北側斜線などといいますが)によって、道路や敷地境界からの距離に応じて、自分の敷地内に建てられる高さが決まっていたのです。
天空率は、この斜線制限の規制を緩和することができるのです。
建物高さというのは斜線制限だけでなく、絶対高さ制限や日影規制、容積率制限などでも規制されてきますので、天空率を適用したからといっても意味のない場合もあるのですが、天空率に有利な計画をすると、かなり高層な建物まで、建築可能となってきます。

どうして、そうしたいのか。

事業系建物(分譲マンションなんかも事業系といってもいいと思いますけど)というのは、いかにして、”その敷地に許された最大の建物を建てる事ができるか”という事が重要になってくるからです。
敷地に対する、権利床の割合が大きければ大きいほど、収益性が良くなってきます。
もっとも、あまり無理な建て方をして、建設コストが高くなってしまっては、やぶ蛇ですが・・・。

話が、どんどん変な方向へ行ってしまいそうですが・・・。
建築に関係ない皆さん。
こういうことって、ご存知でした?
天空率のみならず、建築基準法は今年の改正で、住宅の用途(マンションなんかも含まれます)の建物については”一定規模以上の敷地面積で、一定規模以上の空地を敷地内に確保すると”容積率ボーナスを受けられるようになりました。(法文、読み違えてたらすみません。ご指摘ください。)

このところ、僕らでも、ぼやっとしてると、知らない間に建築基準法が変わってます。
それも、どんどん規制緩和の方向へ。(なかには、規制強化もありますけど。)

この、敷地の有効利用を目的とした規制緩和、ちょっと問題あると思うのです。
建て替えを促進するためには、”規制を緩和して、より大きな建物を建てることができるようにする”というのは、簡単な方法です。
しかし、周辺の土地には、いままでそこに住んでいて、これからもそこに住み続ける人がいます。
その人達は、規制緩和を予想して、その土地を買い、そこに住んでいるでしょうか。
寝耳に水の話だと思います。
”建て替える時には、同じように大きな建物を建てられるようになるのだから関係ない”という人もいるでしょう。
しかし、僕は、それは違うと思います。
そんな大きな建物を、建てる必要のない人はたくさんいます。
さまざまな理由で、建て替えられない人もいます。余生を、その条件で暮らしていかなければならない人もいます。
土地の流動化がそれほど進んでなくて、”家は一生もの”的な考えがあるなかで、規制だけを緩和すると、”公法でのお墨付き”のもとに、私権を侵害されて暮らしていく人が増えるだけだと思うのです。

”まち”というのは、”建物の集合体”ではありません。
そこに住む人がいて、コミュニティがあって成立するものだと思います。
そういう前提に立って、法の規制を考えないと、”資本という暴力”によって、人の住めない街だけが広がっていくような気がしてなりません。

今日は、わかりにくい内容になってしまいました・・・。^^;

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