志段味レポート2

2005_0506_01志段味循環型モデル住宅”レポートの続きです。
レポートといっても、限りなく、個人の感想に近いのですが・・・。

場所は、名古屋市守山区大字志段味及び大字吉根(パンフレットより)。ゆとりーとライン「荒田」バス停下車すぐです。
遠かったです。名古屋市内というのに、地下鉄とバスで、片道680円もかかってしまいました。さすが”志段味”。(名古屋の方ならわかると思いますが・・・^^;)

ところで、”ゆとりーとライン?”なんだその変な名前。と思った方もいるかと思いますが、この”ゆとりーとライン”日本初の”ガイドウェイバス”の営業運転路線なのです。これまたなんだそれ?といった感じですが、高架の専用路をガイドレールに沿ってバスが走るのです。その手のマニアの方は興味津々なのでは・・・。(写真を撮ってきたので、ガイドウェイバスについてはまた後日紹介しますね。)

この、志段味循環型モデル住宅。4棟あるのですが、荒川修作さんの基本構想を引き継いでいるのは、A棟のみで、残りの3棟は名古屋市住宅供給公社から委託された業者さんが実施設計をしている模様。また、A棟も”荒川修作さんの基本構想を盛り込んでいる”ということですが、実施設計は委託業者さんが行っているようです。

以前のエントリーでパースを載っけさせていただいてありますが、そのパースを見ても、そのあたりの事はなんとなく想像できますね。
僕は批評家ではないですし、事業に関わってない人間が無責任なことを言うのもどうかと思うのですが、A棟以外は”どうって事ない普通の建物”に、中部電力と東邦ガスが縄張り争いしてるって感じです。
要は、太陽光発電と多機能型エコキュート、都市ガスを利用した家庭用燃料電池システム、家庭用ガスコージェネレーションシステム”体験の場”といったところです。まあ、その他にも、雨水利用やエコ建材、エコ換気システムなどもPRされてましたが、これといって目新しいものもなく・・・。というところでしょうか。
ちょっと否定ばかりしたような感じになってしまいましたが、こういうシステムを広く一般にPRするということ自体は非常に有意義であり、実際に住むことのできる住宅として建築したということに対しては、評価できることだと思います。
ただ、建築的なおもしろさというか、インパクトとしては、ちょっとつまらない感じがするのは否めないところですね。

そしてA棟ですが、それなりにおもしろかったです。
実施設計で”どうしてこういうふうに設計したんだろう?”と感じるところは多々ありましたが、空間的にはおもしろい建物です。この建物、結構大きく見えますが、平屋建てなのです。そのため、垂直方向の空間の広がりがあって、開放感があります。(まあ、床面積もそれなりにあるので、広々するのは当たり前なのかもしれませんが・・・。)
リビングは、階段状?に構成されていて、キッチンが中央のいちばん低い位置に配置されています。そして、それぞれのステージで自由にくつろげるといった感じ。僕の受けた印象では”広場がリビングルームになった”といった感じでしょうか。そして、リビングを取り囲む形でその他の部屋が配置されています。
この辺は、賛否両論あるのでしょうが、僕は自分で言うのもなんですが変わった人間なので、こういうのには肯定的。おまけに、賃貸住宅なので、こういう空間を体験して、実際に住んでみたいと思う方々に提供することについては、住文化の向上に役立つのではないかと思ったりもするのです。ただ、大方の見方は”見るだけならおもしろいけど、実際に住むのはねえ”でしょうけど・・・。
個人的には、そこそこ暮らしやすいのではないかと思います。

また、緑化壁や屋上緑化で熱をコントロールしようとしているところも、良かったです。
僕は、環境共生住宅というジャンルはアクティブよりもパッシブな視点で考えるべきと思っているので、こういう提案にはひかれてしまうのですが、個人的には、建築で環境と共生するというキーワードで考える時には、建築的工夫でエネルギーのコントロールを可能にし、また、長寿命の建築物をつくるというのが非常に重要なのではないかと考えています。

最後に感じたのは、基本構想だけケージュツカさんが行って、実施設計を実務屋さんが行うことの難しさを目の当たりにしたといったところです。名古屋市住宅供給公社は、”荒川修作さんの基本構想をもりこんで”とおっしゃってるのですが、やはり、実施設計をされる方は、そこまでのレベルに達してないという事がほとんどだと思いますので、意匠的なグレードダウンは否めないというところがあります。
”施工する上で、現実と照らし合わせそこまでは不可能”というようなところは仕方がないにしても、A棟屋上にとってつけたようなソーラーパネルが取り付けられていて、外壁の連続感が全くなくなってしまっていたり、屋上に素人が考えたような花壇が配置されて小さくまとまってしまってたりする様は、やはり意匠的なレベルの低さを感じずにはおれないのです。(おまえが、えらそうなこと言うな。と怒られそうですが・・・。)
せめて、基本構想の意図を汲み取ることができて、少しでも意匠的センスの高い人を選定できないものかと思ってしまうのです。

あと、”中庭を配置して、中と外とが豊かに関係するプラン”というPRもされているのですが、やはりA棟以外は”南”信仰を捨てきれずに、中庭に背を向けた計画になっているのも、個人的には残念なところ。
僕は、荒川修作さんがこのプロジェクトにどの程度関わったかとか、どういう経緯で設計が進められてきたのかという事は知らないのですが、基本構想から感じるイメージと、実際に出来上がったものの格差が大きく感じられるのは、残念なことだと思います。

最後に、今回のこの住宅。4軒が中庭を囲んで1つのクラスターをつくるような計画になってます。共用の中庭を通して、コミュニティを醸成するのが狙いとの事。ただ、正直な実感ですが、ある程度コミュニティが出来上がっている集団が、ここで暮らし始めるのならいいけど、アカの他人が集まって、中庭を共同管理していきましょうってのは、現代人にとっては、なかなか辛いんじゃないかなと感じました。
ただ、そうだからこそ、意義のある提案なのだと思いますが・・・。
とりあえずは、コーポラティブハウスなんかには向いてるんじゃないかな?といった感想です。

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