悪徳建築士にご用心!

依頼した住宅に瑕疵があり精神的苦痛も受けたとして、大阪府在住で短期大学講師の一級建築士が裁判で3700万円の支払いを命じられたらしい。(日経アーキテクチュア2005 1-24号より)

判決文によると、原告は結婚を期に新居を計画。住宅雑誌に掲載された被告の木造住宅に興味を持ち、住宅の設計を委託。設計監理業務契約、工事請負契約を被告と交わした。(CM方式でしょうか?) 工事請負金額は、当初設計監理料を含めて3000万円だったが、空調や床暖房などの工事費を加算して3300万円となった。原告は、2001年4月5日に建物の引渡しを受けたが、その後多くの不具合が見つかり、第三者に依頼した調査鑑定の結果、“再建築が必要”との意見書を受け取った。被告は、“欠陥は補修で対応できる”と主張したが、裁判所は原告の訴えを認め、解体して再建築するしかないと判断したようだ。

記事の内容が複雑で分かりにくいのだが、どうやらひどい事案らしい。
まず、契約上の工期は2000年12月末日までだったが、明確な理由か示されないまま工期は何度か延期され、引渡しは4月にずれ込んでいる。これについては、裁判所は被告が建築確認申請手続きと京都市市街地景観整備条例に基づく行為承認手続きを行わずに2000年8月4日に着工したことも問題視している。確認申請については、竣工間近の2001年3月29日に行っているが、この日付では当初の契約工期よりも後ということになる。遵法精神が無いだけでなく、契約を履行する気すらも無い、最低の人間である。

引渡し後、建物の至る所で雨漏りや排水があふれるという不具合が見つかり、原告がそれを伝えると被告は4月15日に残工事の箇所と修正の箇所が41ヶ所あることを認めた。原告はこの住宅に1~2泊したのみらしい。
被告は5月9日、補修か建て直しか再建築かの費用を全額負担するとの誓約書を原告に渡したが、残代金500万円の支払いも原告に求めた。(これは明らかに、残代金を回収するためだけの手口ですね。そもそも原告は、残工事が終了するまでは、残金支払いの義務は無いでしょう。また、被告には残代金を請求する権利も無いですね。なんたって、工事が終わってないんですから。)
原告が第三者の設計事務所に建物の現地調査を依頼したところ、瑕疵が多く再建築が必要との所見を得、被告に解体と再建築を求めたが、被告は拒否。
原告は、敷地と建物の調査鑑定を依頼した結果、“基礎工法が軟弱な地盤に対応しておらず居住しなくても不同沈下や倒壊などの恐れがある”“床レベルに高低差があり柱が傾いている”などの指摘を受けた。
裁判所は、意見鑑定書の所見のうち、基礎の施工不良や必要な筋違いがない点など、構造上の問題に限っても7点の欠陥があると認定した。
この建物、軸組みに筋違いを入れない特殊な工法(詳細は分からないが一般的な工法も存在するが・・・)を採用することを明らかにせず、外壁や屋根の仕上げは不燃材を使用すると虚偽の内容を記載して建築確認申請しており、完了検査の結果“軸組みの構造”“壁の仕様”“屋根の仕上げ”が申請と異なると指摘され、検査済証の交付を受けられなかった。(これって、設計施工サイドで勝手に行われた結果だったら、引渡しできる代物じゃないですね。)
裁判所は、原告が再建築相当分として請求した、すでに払い込んだ工事代金2800万円と解体費用350万6895円の両方を認め、500万円請求されていた慰謝料については、精神的苦痛により顔面麻痺や耳鳴りなどが起きたとして100万円を相当金額と認めた。(これだけ嫌な思いして、慰謝料ってそれだけしかもらえないんですね~。)
ただし、原告側弁護士によると、建築士は判決が下された2004年12月27日、大阪地裁に自己破産申し立ての手続きを申請。“賠償金を受け取れない可能性があり、原告の悲しみは倍増している”とのこと。
お気の毒な話である。

長文になってしまったが、気になったニュースだったので書かせていただきました。

世の中には、こんなひどい建築士も存在します。
遵法精神もなく、建築主への説明義務、契約の履行義務をまったく果たそうとしない、とんでもない輩です。
そもそも、建築士なんて資格は、学科の試験については演習問題を反復練習して、製図の試験は減点されないような図面を早く書ければ合格してしまうようなものである。その過程で建築を真剣に志す者がふるい落とされ、資格予備校に通ってただ資格をとることだけを目的としている者が合格するなんてことはザラである。(もっとも、ある程度のレベルに達してなければ、受からないものは受からないのだが・・・)
設計を依頼するときには、建築士の見極めが重要ですね。(一般的なものさしでは、駆け出しの僕なんかは一番怪しいかも・・・トホホ)
こういう悪徳建築士のニュースによって、苦しめられるのが実績の少ない駆け出し世代というところが切ないねぇ。

もっとまともな業界になってくれよ。

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