金物

現在、木造住宅を設計すると、耐力壁の計算のほかに、金物の計算もしなければいけない。

といっても、僕ら一級建築士が設計する場合は、たいていの場合は、建築確認の時に計算書の添付を求められることはないのだが、建築基準で定められていることなので、書類添付が求められなくても計算はしないといけない。
ということで、木造の設計をする時には、一応金物の算定をしているのですが、どうも腑に落ちないのです。

僕の記憶によると、「木造は柔な構造で地震などの外力を各接点が逃がすので壊れにくい」と言われてきたような気がします。簡単に言えば、地震なんかが起こった時には建物が適当に動き、力が逃がされるので、壊れるところまではいかないということでしょうか。
僕は、一応この理論を信じていたのですが・・・・。

ところが、最近の考え方はそうではないみたいで、筋違や金物を使って、どんどん建物を剛な構造体にしようとしているみたいなのです。簡単に言えば、建物を一つの箱と見立てて、地震が来たときなんかは、箱がそのまま動くといったところでしょうか。2x4工法の考え方に似てると思います。

これ、個人的には少し問題があると思います。
特に慣例的な寸法で建てられてる木造住宅って、部材が小さいので、極端に力が集中する場所がウィークポイントになります。計算をすると、必然的にそういった場所に大きな金物が必要になって来ます。部材が小さく、ただでさえ断面欠損を少なくしたいのに、金物で穴だらけなんてことになりかねません。取り付け方法の不備による、木材の引き裂きの恐れのある施工例も少なからずあるようです。

文章で書くとわかりにくいですが、好ましくないということには間違いありません。

ではどうするのが良いのか?
極端な応力集中は避けることです。
基本的には、壁倍率の大きな耐力壁付近で大きな応力が発生するようです。また、柱の間隔が大きいところも、大きな応力がかかります。
2階建て程度の木造では、住宅の規模に対して要求される耐力壁の量が満足されていれば良いので、壁倍率の高い耐力壁を造れば、耐力壁の箇所数を少なくできます。そうすると、耐力壁付近には大きな応力がかかり、大きな金物が必要になって来ます。個人的には、柱なども大きくしたほうがよいと思います。
耐力壁は、壁倍率のあまり大きくないものを、バランスよく配置するのがよいと思います。筋違よりも、土壁や貫などの方が理想的だと思います。
また、構造はバランスなので、いかにもアンバランスなプランにしたいというときは、2階建て程度でも構造計算をすることをおすすめします。
公的資金を使わなければ、金物を使わずに設計するということも可能なのですが、建築工事費が割高になってしまうので、あまり現実的とはいえません。あまり、難しいことをするわけではないのですが、大工さんを探すところから始めなければならない現実もあります。市場のシステムにのらないような家を建てるのは大変なのです。

少しとりとめのない文章になってしまいましたが、気になった方はお気軽に質問してください。
地震がきたら倒れてしまった。では、しゃれになりませんからね・・・。

「金物」への2件のフィードバック

  1. 同感です。
    木造の『耐震』とは剛ですね。
    これって、どうなんだろう?といつも思っています。
    剛は建築に限らず、最善の方法とは思いませんので、今後は柔の『制震』等も取り入れていこうかな~と漠然と思っています。
    剛の欠点としては、一度地震などで被災して再度大きな地震が来たとき(先日の新潟地震等は典型的)は、もう耐力が得られないということではないでしょうか?
    今後、木造の『構造計算』はした方が宜しいかと思います。

  2. KONさん。コメントありがとうございます。
    木造軸組み工法の場合、接点が剛でないのに、無理矢理、全体を剛にしようとしているように感じるので、常にそれでよいのかと感じます。
    肝心の部材自体が、ヒンジに発生する曲げ応力に耐えられるのか? 疑問に感じます。
    なんでも金物で補強するという考えでは、木造技術はどんどん衰退していってしまうように感じます。
    新潟中越地震の被害状況を見ても、木造の伝統的な工法が地震に弱いというのは間違いであるということは、揺るぎない事実だと思うのですが・・・。

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