岐阜の路面電車の存続はいかに・・・

先日、名古屋鉄道により運営されていた岐阜の路面電車の廃止が決まりました。

現在、フランス大手のコネックス社が買収に名乗りを上げています。ただ、コネックス社も買収の条件に岐阜市内バス路線の独占運営権を主張している模様です。(このことについては、言いたい事がわからないでもありませんが・・・)

とかく、路上交通の邪魔者扱いされてきた路面電車ですが、海外では、公共交通における役割や投資コストの安さ、環境への付加の少なさなどが見直され、LRTという路面電車の進化型の登場のあり、導入都市が急増しました。日本でも近年、路線延長をする都市や、新規に導入を検討している都市が多数あるようです。今回の、岐阜の路面電車廃止はこれらの世界的な流れに逆行するものといえます。
今まで、日本の地方都市の交通システムは自動車系の交通機関に偏重しすぎるきらいがありました。自動車と歩行者の共存ができていない都市が全国に多数あるといえます。増え続ける自動車に対して、無策に近い街づくりをしてきたために、中心市街地が衰退の一途をたどる都市は少なくありません。岐阜市もおそらく、それらの都市のひとつであるといえるでしょう。

本来都市交通体系は、階層的に機能し、それらを効率的に運用できる街づくりをしていく必要があると思います。例えば、オーストリアのウィーン市では、リングと呼ばれる城郭の外周道路の中はトランジットモールとし、路上交通はバスと路面電車以外は進入できなくなっています。つまり、リングの中は基本的に歩行者専用空間とし、いわゆる一つのショッピングモールやテーマパークのような状態になっています。そして、ウィーン市交通局によって一元的に管理された交通システムによって、公共交通は郊外電車→地下鉄→路面電車→バスと階層的に運営され、自動車利用者は、リング外部に設けられた駐車場に車を止め、パークアンドライドで中心市街地へやってくるようになっています。そして、リング内部のトランジットモールは大変な賑わいをみせています。ウィーンは観光都市という側面もあるもでしょうが、人を呼ぶ魅力をつくるためにはそれぐらいの交通規制が必要であると物語っています。

ここで、階層的に公共交通を整備した場合、例えば路面電車とバスの連携がうまくいってないと、利用客を増やすことは困難だと思われます。コネックス社としては「岐阜市がその役割をする気がないのならば、自分たちにすべてを任せなさい」ということなのでしょう。

また、話は変わりますが、多くの都市において、中心市街地あるいは商店街を歩行者専用空間にしたら、商店街に以前より活気と賑わいがうまれたという報告がされています。
いままで、日本のまちづくりは(僕個人的には、日本はまちづくりでなく、道路づくりと宅地造りしかしてこなかったと思っているのですが・・・)自動車優先でここまできたと思います。そのため、人々の生活しにくい、人と車の共存できないまちが日本全国いたるところにできてしまったのではないでしょうか?

一度、廃止してしまった軌道系交通機関を復活させることは容易なことではありません。逆に、路線延長などとセットで、市民が使いやすい、ニーズにあったものにしていくほうが今後の街づくりに有利なのではないかと思います。岐阜市も”外資に街が奪われる”なんていうことを考えずに、ヨーロッパ圏の街づくりのノウハウを取り入れてみてはどうでしょうか?


ミニ用語解説
<トランジットモール>
ある一定のエリアを一般自動車進入禁止とし、歩行者と公共交通機関のみの空間としたもの。
<パークアンドライド>
自家用車は郊外の設けられた駐車場に駐車し、そこから公共交通機関に乗り換えて中心市街地などに移動する方式。トランジットモールと併用して活用される事が多い。
<LRT>
路面電車の進化形。欧州ではLRTでなくトラムと呼ばれる。
超低床、高速、低騒音と、従来の路面電車の弱点を克服し、交通弱者に優しい交通機関としてヨーロッパ・アメリカなどの多くの都市で見直されている。

2004_1211_01
この電車が、これからも活躍する事ができるのでしょうか?

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